やばい状況を、ずっとこうやって、切り抜けてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



鈍感なままじゃ、生き残れない。



as
the world turns,the city where kids grow up faster/世界が回るように、子供が早く成長していく/それがいいのかわるいのか、僕にはわからない/でも、ひとつだけ、ここに生きてきてよかったのは/に出会えたこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ノドを掻き毟るほどに苦い薬を飲み干す。
顆粒状のクスリは鼻と喉がつながるあたりでじわじわと痛みを包み込んで溶けていく。

 

うわぁ〜風引いちゃったー死ぬー死ぬーと政宗の隣でぶーぶー言ってたら政宗がくれたクスリはちょ〜う苦くて、マズッ!て言ったら「クスリは苦いもんだろ、あほ」って叩かれた。だってまずいもんはまずいんだもーん!!!空っぽになった薬の袋をペシッて政宗に投げつけたら「なんだよ!」って倍以上のちからで叩かれた。


「か、風邪ひいてる人間を叩くなんて!政宗の血は緑だ!」


「んな元気な病人はいねーよ!」


「げほげほげほげほ」


「わ、わざとらしい・・・!」


えへへ、と政宗にクテンと寄りかかる。


「風邪うつるんだけど」


「うつらないうつらない、政宗が俺様にちゅーしな限りうつらない」


「なんだよそれ、しろって言ってんのか」


「さ〜ぁ?」

 



「うっわむかつく」って政宗、言って「絶対しねーからな!」ってPSPのジャンゲーに夢中。
俺は意識を集中する。胸の奥の、ちょっと深いとこの、記憶を残せないような、そんな部分に意識を、集中させる。
政宗の呼吸。心臓の音。嘘でもいいから、記憶に残ってほしいと思った。暖かさとか、心地よさとか、そういう目に見えないものが記憶に残ってくれればいいと思った。



「重いんだけど、つか、お前のせいでまける」


「ジャンゲーに負けるとかあるの?」


「あるの」


「脱ぐの?」


「ぬがない!エロジャンゲーと一緒にすんな!」


「も〜まー君のえっち〜」


「うるさい」


えい、えい、と政宗は肩を揺らして俺を落とそうとする。なんかこうやってじゃれてるの、楽しい。世界がちっちゃくなったみたいに、ここには俺と政宗しかいないような気がしてくる。そんなのカンペキ勘違いなんだけど、そう思う。
それってなんだか、すごいいい。
ピンクっぽい。サクラが風に飛ばされて空気がピンクになってるような、あのキレイな空気みたいな気がする。
いいな、こういうの。空気がきもちいい。


だけど、ちょっと悲しくなる。
よくわかんないけど、すきすぎると、人は悲しくなるんだって。愛になると、強くなるから悲しくならなくなるらしいけど、好きだと、人は悲しくなる、辛くなる、痛くなる。
痛みっていやだ。
時間がたつと気持ちってかわっていくから痛みはかすかな痺れになったり、血のにじんだ切り傷は、かさぶたになる。頬を刺し、耳が千切れるほどの寒さも、いつかはあったかい陽射しに変わる。


こんなに優しい時間なんて、嘘っぽくて嫌いなのに。

遠くなった痛みはまた近づいてきて、さらに痛くなる。

 



「あ、負けたし。佐助のせいだし」


「な、なんでそうなるの!」


「お前、ちょっと熱いな」


「だから風邪ひいてるんだって!」


「あぁ、そうだな」


「ひどい政宗・・・愛がたらない」


「どの口がんなこと言うかな」


「ふつ〜風邪ひいてる人間目の前にしたらもうちょっと優しくしてくれてもいいじゃんか〜」


「どうやって」


「え、そ、そこを聞くの?」


「言ったら、望み通りにしてやるよ」


「え、」


「ほれほれ、言ってみ」


「え、え〜・・・」

 



政宗は、イジワルなわらいかたを、する。
してほしいこと?ミカン食べたいとか、そういうの?
違う、全然違う。
政宗にしてほしいこと・・・

 



「政宗、」


「あ?」


「じゃあ、ちゅーして」


「それだけでいいの?」


「あ、でも政宗に風邪うつるとあれだから、ティッシュ越しで」


「な、なんだそれ!」



俺たちはティッシュ越しにちゅーをする。政宗の、ちゅー、好きだ。

完全な幸せがあるなら、今、この瞬間だって俺は思う。
政宗とこうやって、いれることがうれしい。政宗に出会えてうれしい。今まで辛いこととか、しんどいこととか、やばい状況は笑ってごまかして生きてきた。やばい状況がよくなりますように、って。笑っておけば人のねたみとか、にくしみとか、とにかくそういうよくない感情が好転する気がした。笑顔って不思議だ。
ホントに笑ってなくても、そんなのわからない。それに、自分が何したいかっていうのは一番最後にかんがえて、いつも相手がどう考えてるとかそういうのを読みとらなくちゃいけなかった。そうじゃないとやってけない世界に足を突っ込んでた。俺は、そういう勘だけはむっちゃよかった。笑って知らないふりしとけば、よかった。鈍感なままじゃ生きてけなかった。

だけど、政宗をすきになって、てゆーか政宗がいてくれることに「もしかしたらこれってすごいことなんじゃないかな」って思うようになって、俺は救われたような、そんな気持ちになった。政宗とはなれたくない、政宗が横にいないのは嫌だ。ってそういう子供じみた独占欲。それは政宗にも伝播してって、俺と政宗はちょっとずつ触れるようになって、そこにちょっとやらしいのがまざってくる。
それってすごくいい。
唇の感触とか、舌の感触とか、そういう生々しい感触に、すべてが含まれてる。
いいな、政宗とならなんでもできる。
うれしいのもくるしいのもやさしいのもいじわるいのもそういうの全部、政宗が叶えてくれる。

 



「あ〜やっぱティッシュあるとあれだな〜」


「お、おまえが言ったんだろ!」


「早く風邪なおんないかな〜」


「めしくえ、ちゃんと」


「食べてます〜」


「どこが」


「政宗も俺とかわんないでしょ」


「細さが違う」


「わ!自虐!」


「自虐じゃねえよ!お前が細いんだよ!」



わはは、と俺たちは笑う。
で、俺、咳き込む。(風邪引いてたのわすれてた!)

ねぇ政宗、いいね、こういうの。あったかい。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


だけど俺たちはまだ、お互いに「あいしてる」と言ったことがない。

 

 

 

While there's life, there's hope.

 

 

 

 

20070814

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