あ な た の 前 髪 か ら 

 

一 筋 流 れ た 汗 の よ う に 

あ な た を 記 憶 か ら

 

 

 流 せ た ら い い の に 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



自分に欠けたものを相手に求め、恋が生まれる。


これは、なんだっけ、プラトン?
キョウエン…とかそんな感じの本だった気がするけど、
なくしたかけらを求めて人が恋をするならば、俺はきっとまんまるだと思う。
かけたとこがないってこと。
つまり、俺は恋なんかしない、そんなものは必要ない、
そう思ってた。



あの人が、そんなことはないって俺に教えるまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

饗宴







伊達くんが唐突に「海までつれてけ」と言ったのは俺が免許を取って3日目のときだった。
そのとき、俺は「あ〜車なにのろ!」とかそんなことでちょっと浮かれてたときで、免許はあるけど車はない状態。
それなのに「海につれてけ」と伊達くんは思い切り上からものを言う。あんましゃべったことのない伊達君。っていうかバイト先が一緒なだけの伊達君。そんな伊達君、なんで俺のけーたい知ってるんだろう…って思うけど、そういや交換してたっけ…。

「え、どこの海?」
「車でつれてけよ、免許、取ったんだろ?猿飛は」
「いや、とったけど、車ないし、まだ」
「レンタカーでいいよ」

いいよ、って、なんだそれ。なんでそんな偉そうなんだ。でも、俺は素直にレンタカーを借りにいってしまう。なんでもいいか、伊達くんとだし。と俺は適当にウィッシュをかりてきた。そして、そのまま伊達くんは助手席・・・ではなく後部座席の運転手側にのった。

「なんでそこにのんの?」
「ここが一番事故っても安全だから」
「だ、伊達君・・・俺を信用してないの…。」
「信用してるぜ、じゃなきゃ乗せてなんて言わねーし」
「あーそーですかー」


鍵をいれて、回す。エンジンがかかる。あ、ちょっと久しぶり。っていうか、軽いなあ、教習所の車って重いもんなあ。俺はちょっとアクセルをふむとおもったよりもグワンってなってしまって、伊達くんが後ろから「お前は俺のことを殺す気か・・・・」って。
う、後ろから圧迫かけんのやめてほしいんだけど…。なんか手のひらにいやな汗をかいたけど、俺はスムーズに車を走らせ始める。


ナビは「右方向、500メートル」って、静かな車内をなんとなく和ませるように無機質に未知なる道を(うまいなあ、俺)告げる。
俺は、久しぶりに乗った車と、人を乗せてるっていう緊張感で手のひらにかいていた汗がさらにひどくなってるのにきがついて、赤信号で手を離しててのひらをみると、汗でベッタリしていた。きもちわるっ。と、ズボンでゴシゴシふいたけど、手のひらはまたじんわりしめる。



俺は何に緊張してるんだろう。



伊達くんは黙っていて、っていうか、タブン寝てる。走り出してすぐに「窓開けていーか?」とかそんなこと聞いてきて「顔とか手とかださないでよー。伊達くんケガしたら俺の責任なんだから〜。」「はいはい」ってウィーンって窓あけて、そこからソヨソヨっていうには激しいくらいの風が車内に吹き込む。


しばらくブーンって走ってるとソヨソヨ風の音と一緒に、スー・・・って、寝息が微かに聞こえて、俺は「え?」って思ってバックミラーみるけど、伊達くんはバックミラーにうつらない。
ね、寝てるし・・・伊達くん!
いや、でも、チラってしかみてないし(っていうか目を前から離せない)もしかしたら伊達くんの座高の低さのせいかもしれない。って思い続けていたから、赤信号の今、俺はちゃんと伊達くんがねてるかどうかみるべきだ。と思って、体をグルンと後ろ向ける。
シートベルトしてるからなんか苦しいけど。


「伊達くーん・・・」


声かけても無反応。ね、寝てる。しかもけっこうグッスリ寝てる。
いくら大らかな佐助くんといえども、いきなり海つれてけとかいって、レンタカーまで借りさせて、人には運転させて、しかも自分は一番安全なとこにすわって、寝る!なんてことされたらちょっとむかつくっていうか、悲しくなんだけど。



伊達くんはなにがしたいんだろう。



ていうか、こんな中途半端なときに海に行きたいなんて、どんな思いでいったんだろう。わけわかんない。
だけど、俺は伊達くんの言うことならかなえてやりたいと思う。伊達くんが望むなら、ちゃんとかなえてあげたいと思う。なんていうか、俺は伊達くんに甘いと思う。なんか、俺ってそんな人に尽くすタイプとかじゃないんだけど、伊達くんには甘いは甘いでもなんか、もう、自分がつらくても苦しくても伊達くんを優先させてしまうと思う。
伊達くんに頼まれると、俺は嫌と言えないのかもしれない。もしかしたらそれがもう俺のすべてなのかもしれない。なんで伊達くんなんだろう。伊達くんなんか、いてもいなくてもおんなじ感じなのに…。だからこそ俺は伊達くんがいないとだめだと思うし、いないならいないでいいと思うのかもしれない。伊達くんは俺が生きてる限り、生きてると思うし、俺が死んだら死んでしまうと思う。
不気味なほどに、俺は伊達くんを信じてしまっている。


「猿飛」
「え・・・?」
「なにぼんやりしてんだよ、アオだろ、アオ」
「あ」


アクセル。



「てか伊達くん起きてたの?」
「おきてたよ、ずっと」
「うそだー寝てたじゃん。目ぇつぶって。」
「目痛かったんだよ」



あ、そういえば伊達くんは目が悪い。だから、目が痛くなるのは本当かもしれない。コンタクトしないし、メガネもしない。ぼやけた世界で伊達くんは「別に平気」だと言う。ほんとに平気なのかな。伊達くんは俺と他の誰か…たとえば元親の違いとかでっかいかちっこいかくらいでみわけてんじゃないかな。人とか、赤い服黒い服白い服とかそんな見分けなんじゃないかな。なんて人だ。

そんなぼやけた世界で、伊達くんはいつだってクリア。



視界がぼやけてるからこそ、伊達くんはどんどんクリアになって、そのうちほんとに透明になって消えてしまいそうだ。
それはそれで伊達くんらしくていいと思う。
いつか、パッと消えてしまいそうな伊達くん。

「猿飛」
「な〜ん〜で〜す〜か〜」


海まで、もう、すぐだった。
なのに、伊達くんは「もう帰る」って。

「なにそれ」
「もう、いい」
「なんでよ、海来たいって言ったの、伊達くんじゃん。」
「もう、いいんだ」
「んだよ、それ、わけわかんないよ。いい加減、俺、怒るよ?」
「怒れよ、もう、俺の顔なんかみたくないとか言えよ」
「なに、伊達くん、俺のこと怒らせたいわけなの?こんなとこまでアシにして?それはなんなの?ほんとわかんないんだけど。」


「俺だってわかんねえよ、全然わかんねえ」


伊達くんは困ったようにため息をついた。
なんだ、それ、なにそれ、ため息つきたいのはこっちだ。
でも、俺たちは多分ほんとはわかってる。俺たちがこんな馬鹿みたいなことをしてる理由を、ちゃんとわかってる。だけど、認めるにはあまりに馬鹿馬鹿しくて、馬鹿ばかしすぎてマジメで、重くて、救済の余地もないような、運命だとおもうけれどそれとは程遠い、照れるような甘酸っぱさもなにもなくてただそこにあるのは空気のようになってしまったアタリマエノコト。


俺たちはいったいどうしたらいいんだろうか。


このまま、車を海まで走らせて、海岸でも歩いて、誰もいないことを確認して抱き合ってキスしてスキだといえばそれですべてが解決するんだろうか?しない、それは絶対にしない。抱き合ってキスして感情を確かめあって愛を感じることはそこがゴールじゃなくてスタートだから、このわけのわからない俺たちが、絡まった糸のようにごっちゃごちゃの俺たちが、まっすぐピンとはられるわけはないし、クリアになるわけはないんだ。
俺たちはまだ20年くらいしか生きてない。人生の4分の一もおわってない。もしも、これが、一生の恋だとするなら、とか考えてもピンとくるわけがないんだ。
俺たちは希望に満ちながら常に絶望している。


「伊達くん」
「ん」
「帰ろうか」
「うん」
「伊達くん」
「なに」

 



す き だ よ 

 




伊達くんは目を見開いた。
その目に宿るのは絶望。
俺の目にも絶望。
目の前には不幸。
だけど、仕方ないじゃん、好きなもんは仕方ないんだもん。


その先にあるものが絶望や不幸だとしても、この気持ちを押さえ込んで幸せを得るくらいならば、我慢しないで不幸でいるほうがずっと、何倍も、いい。
それがたとえまちがっていたとしても。

 


俺たちは欠けてるとこなんかなくて、まんまるなんだから人を愛する必要なんかないかもしれない。人を愛する必要なんかなくて、一人で生きていけて、それで全然平気。だけど、欠けとるところがないなら、まんまるい○が二つあわさって、それは、○+○=∞にはならないだろうか?

 



一人で生きていくことができたって、君を知ってしまったら、俺は、



 

 

 

「饗宴

 

 

 



あ な た を 忘 れ れ ば 幸 せ に な れ る と い う の な ら

不 幸 に 身 を お い て で も 

絶 対 あ な た を 忘 れ た く は な い の で す

 

 

 

20070121

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

政宗視力良さそうだよね(白目)

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