「なぁ さすけ。 サミシイりかちゃん って 覚えてるか ?」


「え? なに それ ?」


「高校生のとき 古典の文法で やっただろ。 サ未四已 リカちゃん !」


「あ〜 やったね〜。 サミシイ リカチャンかぁ。 てか いきなりだね」


「 今 思い出したんだ 」


「 ふーん 」

 

 

 

 

 

 

 

 


【件名】

【本文】
サ未四已

 

 

 



携帯が震えた。メールをひらくと、一言だけの”サ未四已”の文字。
なんじゃこりゃ、と思うとやっぱ旦那だし。昼間旦那が変なこといってたのを思い出す。
はみがきしてたから、とりあえず携帯を充電器にさして、がらがらぺってうがいしなきゃ。
ぺっ、てするとミントの匂いが鼻から抜けてった。
俺は充電器をさした携帯をもう一度ひらいて、旦那のメールをみる。
なんだろ、意味わかんねぇ〜。
とりあえず、「で?」って返す。ふぅ。とか溜息ついたらすぐに携帯またぶるぶる。

 


【件名】

【本文】
あいたい
いますぐ
あいにきて



え!やだ!とか思ったけど、そーいや旦那のとこに本とかCDとか置きっぱだから取りに行くかぁ。原チャの鍵を探す、のをやめて俺は服着替えて出掛ける。たまには電車でいこーっと。電車の窓から流れるように変わる風景は独特だ。原チャを運転していても、風景はかわるけど、電車の風景の移動とは違う感じがする。電車はおんなじレールの上を毎日毎日ぐるぐるしてるから風景だって毎日毎日おんなじなんだ。昨日みた風景と今日みた風景はおなじ時間軸に存在するわけじゃないけど、その風景は記憶の重なりから同一性をおびて、不思議な気持ちを発生させる。


そういえば、昔、まだこどもだったとき、旦那とよくこうやって流れる風景を見ていた。あの頃は、おとなになるなんてずっとずっと先のことで、そんな日がくるだなんて思うことができなかった。だけど、ふと気付けば俺も、ようやく旦那に追い付いたんだな、って。普段はそんなこと思わないけど、(だって旦那アホだし)1年、の差は大きいのかもしれない。なんて。


チカチカ、ピカピカ、光るネオンとか、その光りを吸収して輝く雲とか、ビルのガラスに反射した光りとか、流れる人とか、なんだかひどく遠い。そういったものは俺に親しみを覚えさせず、クロスしないもの。

 


そうだ、俺はいま、ここにひとりぼっちなんだ。

 



ガツン、と電車の窓に頭をぶつける。かすかな痛みがおでこに広まって、波紋のように、じわじわと、ひろがっていく。その痛みはなんだか、掴みきれないもので、だけど俺はこいつの正体を知っている。


さみしい、さみしい、ひたすら、さみしい。こんなさみしさ、旦那がいなきゃ知ることはなかった。友達でも家族でも仲間でも一緒にいればさみしさよりも、楽しさとか喜びを俺はもらってて、さみしさなんてもらうわけがなかった。なのに、それなのに、

 


旦那のせいだ。
旦那が俺にさみしいなんて、ことを教える、思い出させる。
だけどそれは必要な痛み。
ポッケに突っ込んだままの携帯だして、メールを打った。

 


【件名】

【本文】
あいたい
いますぐ
あいにきて

 

 

 

 

 

淋しいさっちゃん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


( 旦那 の バ カ 。 )


( バ カ 野 郎 。 )

(会いたいのは本当は俺の方じゃないか。)

 

 

20070825

 

 

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